オトナの恋を教えてください
私は腕を伸ばし、思い切って柏木さんの口元に触れた。
下唇をなぞると、一気に伸び上がり、彼の頭を両側からがしっとつかむ。

ぐいと引き寄せ、彼にキスをした。


「柏木さん、好きです。あらためて、私と付き合ってください」


唇を離し、鼻と鼻がくっつきそうな距離で言う。


「いろは」


「もう、遠距離は無理とか、お互い束縛しないようにとか……そういう言い訳は聞きませんよ。近くであなたと笑っていたい」


柏木さんが帰ってきたら、私から言おうと決めていた。
逃げ場を塞いだ愛の告白に、困った顔で柏木さんが答える。


「おまえさ、そういうことは俺から言うモンでしょ?そういう雰囲気だったでしょ?それを無視して……。
あああ、やっぱり、いろはのバカだけが治ってない」


「バカはお嫌いですか」


「いや、大好きですけど」


柏木さんが笑った。
私も笑った。
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