オトナの恋を教えてください
ランチタイムの社員食堂は多くの社員でごった返していた。
人波をかきわけ、時折立ち止まって伸び上がり、私は友人を探す。
手には先ほど並んでゲットしたお昼の定食のお盆。
「いろは!こっち!」
腰を浮かせ、手を振ってくれるのは同期の美野里(みのり)だ。
私は嬉しくなって、小走りで美野里のいるテーブルに向かう。
「ほらあ、走るからお味噌汁こぼれてるよ」
美野里に言われ、私はでへへと笑いながら座った。
「今日もお互いB定食だね」
「カロリー控えめのB定食はこの会社の女子のマスト!」
もっともらしく言う美野里は、カロリー控える必要なんかないほど細い。
先月彼氏と別れたばかりのせいもあって、自分磨きに余念がないのだ。
「あとは、メタボのオジサマたちにも必須だね」
「もうちょっと味もよければ最高なんですけどー」
私たちは手を合わせてから、味が薄くて病院食みたいなB定食に箸をつける。