愛せない妻へ。





妻が結婚式で親に感謝の手紙を読んだ。



『今日まで育ててくれてありがとう。

これから遥さんと2人で幸せな家庭を作っていきたいと思います』



泣いている妻の隣で笑うのを必死に堪えた。


私と2人で?


幸せな家庭?


この女が何を言ってるのか分からなかった。



結婚式まで私たちが会ったのは数回程度。


それも結納と結婚式の打ち合わせ、ただそれだけのためだ。



妻が私の家に引っ越しする時でさえ、私は仕事で手伝うことすらしなかった。


なのによくそんなことを言えたものだ。



私も妻もお互いを愛してなどいないのに、なぜそんなことを言えたのか私には分からなかった。



ただの馬鹿な女にしか見えなかった。


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