戦国IF
第1話「出会い」
澄み渡る青空
のどかで、平和な城下町の風景
そしてーー
『ぐっきゅるる〜』
「お腹…空いたなぁ〜」
もぅ、一週間近く何も入れていないお腹の、ヘルプを求める声が鳴り渡る。
「だれか〜助けて〜」
晴れの昼空、道のど真ん中で、行き倒れになっていた自分。周りの人は、チラチラ見ているか、知らん顔して終わる。
「はぁぁああああ…」
人生最大級のため息をつく。
毎回こんな感じで、1日通して、繰り返す。もぅ、イヤになる程わかってきた、現実の残酷さ。
このまま、餓死して死んじゃうんじゃ無いのかなと思うと、少し涙が溢れてくる。
「あの〜すみません、通行の邪魔なんですけど〜」
突然上から、ややひねくれ気味の声がした。
いつの間にか、自分の隣には、肩を露出させた服を着、饅頭によく似た帽子を被った少年がたっていた。
饅頭…考えただけで、お腹が鳴りかける。
「あ〜すみません、邪魔したくて、ここに転がっているのではなくですね、ただ〜…」
「ただ〜?何ですか〜?」
『ぐっきゅるる〜』
饅頭が頭から離れず、大きなお腹のヘルプが鳴り響きわたった。
最初は、キョトンとしていた彼だったが、次第にこちらの状況を把握したのか、肩を震わせ爆笑していた。
「なに〜?君、もしかしなくても、行き倒れな感じ〜?」
「だっ…だったら何ですか!」
お腹のヘルプを聞かれたこと、そして、それを笑われた事で、顔を真っ赤にして精一杯の反発をした。つもりだった。
ひょいっと、何かが自分の手元に投げられた
「これって…」
笹の葉に包まれたもの。それは…
「かしわもち…!」
「ちょうどね、土産で貰ったんだけど、食べれなくて困っていたんだ…って、なんで号泣してんの?」
「あぁ…いや…すごく、お前いい人だなって…」
ありがとう、ありがとう、神さまですか、この少年は…!
「じゃっ、オレ行くとこあるんでね
〜、また行き倒れになるなよ〜」
また、倒れた時はよろしくお願いします〜。という言葉はしまいこんで、彼に手を振り見送った。
いい人だったなー、と浮かれ考えていたそんな時、町の人たちが、ザワザワとし始めていた。
「おい、たった今天竜寺で、辻斬りがあったそうだ」
「本当かよ!その話!」
辻斬り…?
ほんの数分前に起こったようで、まだ、少数の人しか話をしていない。しかし、少しだけ、胸騒ぎがした。
天竜寺…?
「あの…、天竜寺って…?」
「知らねえのか?この道真っ直ぐ行った所にあるお寺さ」
通行人の男性が、指をさし教えてくれた。
ふと、嫌な予感がよぎった。
先ほどの少年が、歩いて行ったのはそのお寺の方角だった。