この列車は恋人駅行きです。



そんなことを思ってると、遅れていた53分発の電車が3番線にやってきた。



やっと電車が来たことで、混んでいた駅のホームが少しだけ空いた。



遅れた電車を振り返って見ると、私の後ろにはいつものように王子が並んでいた。



私の好きな仕草であるイヤホンを耳にはめるところは見れなかったけど、王子が見れたから今日も1日頑張れそう。



『今日も1日頑張るぞ』
なんて柄にもなく心の中で気合いを入れた。



そんな矢先に駅のホームにまた放送がはいる。



『お客様にお知らせ致します。8時4分発の折り返し運転の豊野行きの電車は、事故の影響で3番線からの発車となります。3番線にまもなく到着致しますので、お並びになってお待ちください』



…え、ちょっと待って。



3番線って私が先頭で並んでる2番線の向かい側のところだよね?



3番線に電車が来るということは、自然に私が一番後ろになるってこと?



ずっと先頭に立って電車が来るのを待っていたのに。



チラッと隣の乗車口に並んでいる列を見る。
隣の列は自然な流れで一番後ろに並んでいた人が一番前になっていた。



そして2番線に先頭で並んでいた人は、その流れにのまれるように一番後ろになっていた。



後から来たくせに先頭に並んでる。
そりゃそうか、一番後ろに並んでる人が3番線に近いもんね。


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