まだ、心の準備できてません！
でも、やっぱりそうだよね……。

からかわれてるだけ、とは言ったけれど、本心ではそんな単純な理由ではないだろうと思っている。

そうじゃなければいいなって、どこか期待にも似た気持ちもある──。


ゆっくりスプーンを動かしながら考えていると、オムライスの隣に並べた和風パスタをフォークに絡ませる由香が、興味津々に言う。


「美玲はどうなの？　その人、恋愛対象として見れそう？」

「それはわかんないけど……。でも、他の誰とも違う、特別な存在にはなりそう……かな」


たどたどしく、でも正直に答えると、由香の表情がみるみる緩くなっていく。

「そっかぁ～」とニヤけながら頷かれると、なんだか気恥ずかしくて、私は黙々とオムライスを口に運んだ。


「それでもすごい進歩だよ！　よかった、美玲がちゃんと男の人に目を向けてくれるようになって」


安心したように優しく微笑む由香に、私もわずかに笑みを返す。

……もしかしたら、また恋愛出来るかもしれない。

自分が本当は誰かを愛したいと思っていることに気付かせてくれたというだけでも、夏輝さんとの出逢いは特別なものに思えた。


しかし、問題はここから。


「これから私どうすればいいのかな」

「んー……心の準備しておくしかないんじゃない？」


大口を開けてパスタを頬張る由香の、かなり抽象的な一言に、私は少々脱力するのだった。




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