まだ、心の準備できてません!
それを聞いて、まず頭に浮かんだのは、弁当屋“タケちゃん”のこと。

そばにスーパーや飲食店が出来たために、そこへお客さんが流れてしまい、経営が厳しくなっているとお父さんが言っていたことだ。

まさか、このマシロも同じ状況なの? というか、その前に……。


「“トワル”って何でしたっけ?」


眉根を寄せたまま聞くと、浜名さんは呆れたように目を細める。


「もー美玲ちゃんったらとぼけちゃって。ここから歩いて五分くらいのとこに、新しく出来たビルのことじゃない」

「あ……あぁ、あのウチと同じような包装用品とか雑貨を売ってるとこ!?」


そういえば、と思い出して目を開くと、浜名さんはうんうんと頷いた。

ウチとは雰囲気が違いすぎて意識していなかったけれど、あそこは一応ライバル店なのだ。

もっと危機感を持っておくべきだった……と、今さら思っても遅い。


「ウチもお客さん減ってるんだ……」

「たしかに、お得意さん以外はトワルが出来てからぱったり来なくなった気がするわよね……」


今は店内に一人もお客さんがいない。それを思うと急に不安が押し寄せ、浜名さんとともに肩を落とす。

タケちゃんのように、私達のお得意さんからの注文数が少なくなっていくこともある。

客数が減ってしまうのはもちろん、これもよく考えれば大打撃だ。

もしもこのまま、どんどんマシロの需要がなくなっていってしまったら──?

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