まだ、心の準備できてません!
翌日、久々に家でのんびりしているお父さんに、「ちょっと買い物してくる」と告げ、自転車でトワルに向かった。
サラリーマンやOL、学生らしき集団が行き交う街中に、オフホワイトのレンガタイルで覆われた三階建てのビルが佇んでいる。
お店である一階にはカフェのような赤い屋根がついていて、おしゃれでポップな雰囲気を漂わせていた。
一度下から上まで眺めてから、店の入口に近付く。
淡いピンク色で“Toile(トワル)”と書かれている、透明なガラス戸を押し開けると、「いらっしゃいませ」という女性店員の声と、華やかな商品の数々が出迎えてくれた。
明るい店内は、一見したところ雑貨屋のようだけれど、置いてある商品はウチと同じようなラッピング用品がほとんどだ。
インテリア売り場のテーブルクロスのように見やすく掲げられた包装紙、籐で出来たカゴに入れられたオーナメント、お菓子のようにボックスに入れられたマスキングテープ……。
見慣れた品物が所狭しと並ぶ。どうやらここは、本当にウチと同じ包装用品専門店らしい。
しかし、商品の種類が同じでも、マシロの店内と違うのは明らかだった。
見せ方も、バリエーションも、この空間すべてが女子のために作られたと言ってもいいほど、可愛くておしゃれなものばかり。数人いるお客さんも、やはり皆女性だ。
入って数秒で、真っ白なトレーやビニール袋をそのまま棚に置いた、色気のないマシロとの違いを思い知らされてしまった。