まだ、心の準備できてません！
「こんにちは。いつか君はここに来ると思ってたよ」


その言葉に隠された意味も気になるけれど、今はそれより聞きたいことがある。

次に会ったら、まずこの間酔い潰れてしまった件を謝ろうと思っていたのに、それも出てこない。

私が口にしたのは、今衝撃を受けた事実を確かめる一言。


「夏輝さんって……ここで働いてたんですか？」


強張った顔で聞く私を見下ろし、彼は「あぁ」と短く答える。

まさか、夏輝さんがトワルの──ライバル社の社員だったなんて……！

自然と胸にあてていた手をきゅっと握り、ドクドクと脈打つ心臓を宥めていると、一つの疑問の答えが見えてきた。


「じゃあ、時々マシロを見に来てたのも……」

「敵情視察ってやつかな。下見と言ってもいいかもしれないが」

「下見？」


意味をはかりかねて首を傾げるけれど、夏輝さんはそれを気にも留めず、いつもの優しげな微笑みとは違う、どこか冷たさを感じる微笑を浮かべてこんなことを言う。


「君がどうしてここに来たのか、当ててみせようか」


何の返事も出来ずにいる私に、腕を組んだ彼が淡々と話し出す。


「マシロの経営状態があまり良くないこと、その原因の一つがこのトワルだと知って、ライバルの様子を見に来た。……違う？」

「なっ……！」


何でそこまで見抜かれてるのよ！？

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