まだ、心の準備できてません!
なんなの、あの余裕綽々な態度……! マシロをなくすことなんて容易いとでも思ってるの?

気があるような優しい言動をして、実はあんなことを考えていたなんて……とんでもない腹黒男!!


怒りにまかせて自転車を漕ぎ、行きの倍くらいの速さで家に帰った。

リビングのドアを勢い良く開けると、ソファーに座ってのんびりテレビを見ているお父さんが、驚いたように振り向く。


「どうした美玲? 買い物しに行ったわりには早いじゃないか」

「お父さん!」


彼の問いには答えず、私はずんずんソファーに近付く。

すぐそばに仁王立ちすると、お父さんは私をギョッとしながら見上げ、少し萎縮するように背中を小さく丸める。


「なんだ、どうした?」

「絶対負けちゃダメだからね」


突拍子もない私の言葉に、お父さんはキョトンとして固まった。


「な、何がだ?」

「マシロだよ! トワルが乗っ取るっていう話が出てるんでしょ!?」


きっぱり言い放つと、お父さんは驚きを隠せないというように目を丸くした。


「誰がそんなことを……」

「夏輝さん……浅野夏輝って男の人を知ってるよね? 彼が言ってたんだから間違いない。あの人、マシロの事情を探るためにお父さんのところに来たんじゃないの!?」

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