まだ、心の準備できてません!
棚卸をする日は休憩もままならず、皆で残業して行っている。

それが普通になってしまっているけど、よく考えればその残業代も削れるなら削りたいよね。


「今度から、帳簿棚卸っていう方法を取ろうと思う」


お父さんの一言に、「帳簿棚卸?」という私達の声と、首を傾げるリアクションが重なった。

彼は取り出したクリアファイルをめくり、見慣れない用紙が入ったページを開いて、私に手渡してきた。

私の両隣から、浜名さんと阿部さんも覗き込む。


「こういう管理表を作って商品別にバインダーにまとめるから、商品を受け入れた人や出した人が、その都度個数を記入していくんだ。
そうすれば、在庫数はその表を見ればすぐわかるようになる。棚卸も、実際に商品を数える手間が省けるから、時間がかからなくなるってわけだ」


つらつらと説明されたけれど、一度聞いただけでは理解しづらい。

きっと私と同じだろうパートの二人も、難しそうな顔をして表と睨めっこしている。

そんな私達を見たお父さんは、ははっと笑いを漏らした。


「まぁ、皆賢いから徐々に覚えていけるよ。後でもっと詳しく教えるから、ちょっとやってみてくれないか?」


これもマシロのためになるなら、もちろん協力する。

やっぱり同じ想いの私達は、気合いを入れて「はい!」と返事をした。

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