まだ、心の準備できてません!
◇オフィスラブを初体験
十月の棚卸は、慣れないながらも皆で頑張り、なんとか新しい方法で終わらせることが出来た。
街は枯れ葉が舞い、朝晩だけでなく昼間もかなり空気が冷たくなってきている。
そんな、少し物寂しい雰囲気が漂う十一月の第二金曜日、午後一時半。
カーキ色のチェスタージャケットにスキニージーンズという、相変わらず色気のないスタイルで、私は自転車に跨がっていた。
色気なんて必要ない。今日はラッピング講習会の日なんだから。
むしろ戦闘服でも着て行きたいくらいだ!なんて、よくわからない闘志を燃やしつつトワルへ向かう。
講習会はトワルの三階の会議室で行うと、浅野さんからもらった紙に記されていた。
ビルに着き、外側から建物を見回すけれど、どこから三階へ向かったらいいのかわからない。
「とりあえず中に入るか……」
バッグを持ってドアをくぐると、「いらっしゃいませ」と明るい女性の声が響く。
この間の美人さんとは別人の女性店員で、講習会に来たことを告げると、店内の奥にある階段へ案内された。
こんなところに階段があるなんて、前回来た時は気付かなかったな。
店員さんにお礼を言い、二階へ上がると、そのフロアはオフィスになっているらしく、社員がデスクワークしているのが透明なドアの向こうに見える。