まだ、心の準備できてません!
「ご、ご名答です……!」


彼女の名探偵さながらの推理に、私は目を丸くした。さすが、よく見抜いてらっしゃる……。

でも、そこで浅野さんの名前が出てくることも、やっぱり不思議だ。


「浅野さんって、ここでは何の仕事をしてるんですか?」


深まる謎を解き明かしたくて、ずっと気になっていたことでもある質問をすると。

一瞬動きを止めた三木さんは、テーブルの上を綺麗に片し、ゆっくり腰を上げながら答える。


「……教育人事担当、つまり教育係です。より良いサービスを提供する社員を育成するために、研修を行っている指導者です」

「あぁ、なるほど……!」


なんだかしっくり来て、とても納得した。

マシロで私に指摘してきたり、講習会に誘ってきた時のことを思い返すと、たしかに教育係みたいだったなと思う。

きっと甘いマスクでスパルタ教育しているんだろうな……。


なんて想像していると、三木さんはしゃがんで床に置かれていた段ボール箱を持ち上げた。

講習で使った残りであろう資材が入ったそれを、テーブルの上に置きながら、彼女は自らもう一つの情報を教えてくれる。


「彼は、社長の甥っ子さんなんですよ」

「甥!?」


予想外の事実に、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

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