まだ、心の準備できてません!
「でも、そいつに引っ掛かりそうになったんだ? 頑なに恋愛出来ないって言ってたみーちゃんが、そんな簡単に揺れるなんてね」


ちょっぴり刺のある口調で嫌味を言う陽介を横目で見やると、彼はムスッとしながらビールをぐいっと呷った。

そしてペロリと舌で唇を舐める姿はなんだか犬みたいで、ふくれっつらをしているけど可愛い。

同じ仕草でも、あの浅野さんと比べるとこうも違うのか……と、今まったく関係ない、しかも失礼なことを思っていると。


「あのねぇ、陽介くん。これは揺れて当然なんです」


人差し指をぴんと立て、評論家のように由香が自信満々で話し始める。


「いくら恋愛出来ないって言ってても、女の本能は疼くんです。大人のフェロモン振りまくイケメンに、甘い言葉で迫られてごらんよ!? 女子の大半とは言わないまでも、十中八九は惚れるから!」

「あぁ、そう、ですか……」


いろいろとツッコミどころ満載な由香の発言だけど、陽介はそれに反応するのも面倒になってしまったらしく、口の端をヒクつかせて枝豆に手を伸ばした。


……たしかに、陽介が言うのも無理ないと思う。

陽介に告白された時はあっさり断ったくせに、浅野さんにはすぐ流されそうになっちゃったんだから。

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