まだ、心の準備できてません!
お礼を言って皆で食べ始めると、ジャスミンさんはカウンターに両手をつき、私を見て片眉を上げる。


「ホワイトちゃん、どうしたの? なんか悶えてたみたいだけど。あんまり悩むとハゲるわよ?」


彼女の頭が、照明に照らされてピカッと光り輝いた気がした。

込み上げる笑いを噛み殺しつつ、表面サクサク中もっちりで、やみつきになりそうなくらい美味しい春巻をかじる。


「ちょっといろいろあって。仕事のこととか……あ!」


そう答えていて、あることを思い出した私は、目と口をぱかっと開いて言う。


「ジャスミンさん、ここに来るお客さんで、食品関係の会社に勤めてる人っていませんか?」


ここへ来る機会があったら聞こうと思っていたのだ。

ブライズには主に中高年の人達がたくさんやってくる。その中にウチの商品を使ってくれる人がいたら、交渉出来るかもしれないと思って。

期待を込めてジャスミンさんを見つめると、小首をかしげた彼女は、軽く握った手を口元にあてる可愛らしい仕草をして考える。


「食品関係……そうねぇ、いたと思うんだけど、ぱっと名前が出てこないから最近は来てないのかもしれないわ。アタシ、お客さんの顔と職業は結構覚えてる方だから」

「そうですか……」


うーん、そう簡単には見付からないか……。

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