まだ、心の準備できてません!
めぼしい人がいたら、ジャスミンさんから連絡をもらうことにして、私達はカウンターの方へ戻る。

その間に、私は何度も頭を下げていた。


「ありがとうございます、ジャスミンさん」

「いいのいいの、これくらい! アタシも人事だと思えないし」

「えっ?」


意外な言葉に反応すると、笑っていた彼女は、それを苦笑に変えて言う。


「このブライズも、経営難で苦しんだ時期があったのよ」

「そうだったんですか!?」


そんな時期があったなんて、いつ来ても繁盛している今の状況からはあまり想像がつかない。

目を瞬かせていると、彼女は何かを思い出すように目を伏せる。


「でも、もうダメかも!……って時に、真のヒーローが現れるのよね」


“真のヒーロー”……その人に、ジャスミンさんは助けられたのだろうか。

伏し目がちな表情を見つめていると、その瞳は私に向けられ、にこりといつもの笑顔を見せる。


「ホワイトちゃんにも、必ず助けになってくれる人はいるから。諦めずに頑張って」


……その言葉は、とても心強くて。

また勇気をもらえた気がして、私も笑って「はい!」と元気に頷いた。

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