まだ、心の準備できてません!
やっぱり陽介はそこに引っ掛かったらしく、「……“美玲”?」と怒ったような低い声で呟き、じとっと私を横目で見てくる。

うわ、陽介が陽介のくせに怖い!


「あ、えぇと、うん! 中学の頃からの友達ですーって」


えへへへ、と不自然な笑い方をしながら、とりあえず当たり障りなく答えた。

すると今度は陽介が、繋いだ手に力を込める。

それに反応して息を呑むと、挑戦的な目をした彼が、まっすぐ浅野さんを見据えて口を開いた。


「……そう。仲良いんですよ、僕達。だから、今日は悪いオオカミから守ってあげなきゃと思って」


ちょ、ちょーっと陽介クン! 挑発的なことを言うね!

『敵視しまくっちゃうかも』とは言っていたけど、面と向かってこんな発言をするとは……。


ひとりハラハラしながら浅野さんの反応を窺う。

けれど、やはり彼はいたって平静な様子で。


「オオカミなんて、こんな街中にはいないけど?」

「真面目に返さないでくださいっ!」


しれっと返され、陽介はうがー!と怒りながらつっこんだ。

さらりとボケる浅野さんだけど、一枚上手のように思えるのは何故だろう。

ふたりのやり取りに苦笑していると、浅野さんもクスッと笑って「悪い」と謝った。

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