まだ、心の準備できてません!
何事もなく講習会が終わると、陽介と夕飯を食べて帰ることにした。
今日はブライズではなく、焼き鳥が美味しくて、薄暗い半個室の雰囲気が良い居酒屋を選んだ。
ふたりで入るのがちょうどいいくらいの、窮屈すぎない個室に、小さめのテーブルを挟んで向かい合って座っている。
「講習会ってあんな感じなんだね。なんか、好きだった図工の時間みたいで面白かった」
乾杯した後、ビールを喉に流し込んでから言う陽介に、私も「ね!」と同意してノンアルコールカクテルに口を付けた。
盛り合わせの焼き鳥に手を伸ばす陽介は、思い出したように言う。
「そういえば、今度マシロにテレビの取材が来るってほんと?」
あぁ、そうだった。
ローカルな情報番組のクリスマス特集で、商店街のケーキ屋や、マシロのことも少しだけ取り上げてくれるらしい。
「うん、そうみたい。よく知ってるね」
「この間お店に行った時に浜名さんから聞いた。その時には花届けるから、とびきり華やかにしたとこを撮ってもらってよ」
「ありがとう!」
笑顔でお礼を言うと、陽介も得意げに笑った。
彼の粋な計らいが嬉しい。
たしかに、テレビ番組に取り上げてもらえるなんて今まで一度もなかったし、素敵なお店だとしっかりアピールしておきたいもんね。