まだ、心の準備できてません!
お父さんの声が聞こえていたわけではないだろうけど、陽介は私と同じことを思ったらしい。


「みーちゃんのお父さん、僕と一緒って聞いても心配のひとつもしないもんな」


不満げにビールをぐびっと飲む彼に、私はまた苦笑してぼんじりをかじった。


「陽介は信用されてるんだよ。ずっと前から友達なんだし」

「なんかそれって、男として情けねー……」


ゴトリ、とグラスを置く彼の言葉にはため息が混ざり込んでいた。

そして、不機嫌そうな顔で私を見据える。


「みーちゃんも警戒しなさすぎだよ。何の躊躇いもなくふたりでこんなとこ来ちゃってさ、どうして僕が何もしないって思うかな」


そう言われてみればそうだ。私は、陽介とふたりでいることに少しの危機感も、緊張感も持っていない。

陽介なら何も手を出したりはしないという、自信があるから。

それは、決して確かなものではないのに。


「……僕だって男なんだよ?」


急に鋭さを増したような声に、ドキリと心臓が動く。

ていうか、またあの夢の通り……またデジャヴュ!?

私って超能力あるのかな、なんてどうでもいい考えは、次の陽介の一言でどこかへ消え去る。


「今日は、このまま帰らないでよ」

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