まだ、心の準備できてません!
元カレでも、さっき告白してきたという陽介くんでもなく……俺?

あれだけ元カレのことで泣いていた彼女の夢の中に、まさか自分が登場しているとは。


「……くっ」


なんだか笑えてきた。面白いとかじゃなく、嬉しくて。

彼女の人柄や雰囲気は好きだし、ブライズで『好意を持ってる』と言ったのは本当だが、確かな恋心を抱いていたわけではなく、漠然としたものだった。

それに、彼女は真白さんの大事な一人娘。本気で惚れるようなことにはならない。

……そう思っていたからこそ、企みを持って近付いたというのに。

恋愛する気にさせてやりたいという想いが、何故だか一気に強くなった。他の男ではダメだと思うほどに。


ヤバいな、これは。今この瞬間、この子にあっさりと落ちてしまったのかもしれない。

真白美玲を、自分だけのモノにしたい──。


あどけない寝顔を覗き込み、柔らかな髪をそっと撫でる。さっき触れた時よりも、愛おしさを込めて、繊細に。

そして、自分自身にも誓うように呟く。


「……いつかきっと、俺が君を落としてみせるよ」


だから、心の準備をしておいて。

またイタズラ心がむくむくと目を出し、自分のバッグから取り出したメモ帳を一枚破いて一言書くと、プレゼントと共にテーブルに置いておいた。

きっと君は、これから混乱することばかりだろうけど、時が来たら必ず伝えるから。

俺の、本当の想いを──。

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