まだ、心の準備できてません!
無意識のうちに両手に持っていたコートをどうしようか迷い、とりあえず掛けとけ!と浅野さんの肩辺りに両手を伸ばした、その時。
ぱち、とうっすら彼の瞼が開いた。
ギクッとしたものの咄嗟には動けず、身を屈めたまま固まる。
眠そうに瞬きをして顔を上げる彼と、視線が絡まった。
「ん……俺、寝てた?」
「……はい」
とろんとした寝ぼけ眼で、ちょっぴり可愛らしい浅野さんに、クスッと笑いそうになった。
けれど、コートを持って構える私の姿をじっと見つめる彼に気付いて、はっとする。
「あ、えっと、このままじゃ風邪ひくかもと──っ!?」
言い終わらないうちに、突然手を引っ張られて声が詰まる。
身体がバランスを崩した一瞬、何が起こったのかわからなかった。
背中に回される腕。一層強く感じる、煙草の匂い。
心臓がギュッと掴まれたみたいに苦しくて、息が出来ないし、動けない。
──私は、コートごと彼に抱きしめられていた。
「これ、掛けようとしてくれてたんだ?」
甘さを含んだ低い声が耳元で響く。
ようやく頭の中で危険信号が点滅し、私は彼の腕から逃れようともがき始める。
「ちょっ、離してください!」
「優しいな、美玲」
「そんなんじゃ……!」
「俺のこと、嫌いなくせに」
ぱち、とうっすら彼の瞼が開いた。
ギクッとしたものの咄嗟には動けず、身を屈めたまま固まる。
眠そうに瞬きをして顔を上げる彼と、視線が絡まった。
「ん……俺、寝てた?」
「……はい」
とろんとした寝ぼけ眼で、ちょっぴり可愛らしい浅野さんに、クスッと笑いそうになった。
けれど、コートを持って構える私の姿をじっと見つめる彼に気付いて、はっとする。
「あ、えっと、このままじゃ風邪ひくかもと──っ!?」
言い終わらないうちに、突然手を引っ張られて声が詰まる。
身体がバランスを崩した一瞬、何が起こったのかわからなかった。
背中に回される腕。一層強く感じる、煙草の匂い。
心臓がギュッと掴まれたみたいに苦しくて、息が出来ないし、動けない。
──私は、コートごと彼に抱きしめられていた。
「これ、掛けようとしてくれてたんだ?」
甘さを含んだ低い声が耳元で響く。
ようやく頭の中で危険信号が点滅し、私は彼の腕から逃れようともがき始める。
「ちょっ、離してください!」
「優しいな、美玲」
「そんなんじゃ……!」
「俺のこと、嫌いなくせに」