まだ、心の準備できてません!
毎年この時期になると、お父さんとふたりで必ず出向く場所がある。
陽介のところでお花を買って、小高い丘の上にある、お母さんが眠るところへ行くのだ。
昨日タケちゃんやアザミのことを聞いてから、命日までの数日、浮かない気分で過ごすことになりそう。
今年はあまりいい報告が出来ないかもしれないよ、お母さん……。
「まさか、タケちゃんが閉店するとはね……」
倉庫に荷物を運んでくれた業者さんを見送った後、カウンターで受け取った伝票をのっそりと整理しながら、阿部さんがため息混じりに言う。
昨日私に話したのと同じことを、お父さんはパートのふたりにも今朝報告していた。
商店街を歩く楽しげな人達とは打って変わって、私達の間の空気は重苦しい。
「トワルに乗っ取られるのも、時間の問題かしら」
拭き掃除をしていた雑巾を手に、眉を下げて言う浜名さんの弱気な言葉で、一瞬沈黙が生まれる。
「……そんなことないわよ」と言う阿部さんだけど、声に力強さはない。
私も今回のショックは大きくて強気になれず、どうしてもマシロが無くなった時のことを考えてしまう。
本当に、覚悟しないといけないのかな……。