まだ、心の準備できてません!
「お父さん!? お父さんっ!!」


やだ、やだ……どうしたらいいの!?

気が動転してしまい、お父さんの肩を軽く揺すって、ただ名前を呼ぶことしか出来ない。

すると、私の叫び声が聞こえたのか、店内の方から阿部さん達がやってきた。

その姿を見て、ほんの少しだけ冷静さを取り戻す。


「店長!! どうしたの!?」

「わからないです……急に倒れたみたいで……!」

「と、とにかく救急車!」


浜名さんの声で一番にしなければいけないことを思い出し、私はすぐさま外れていた受話器に手を伸ばす。

そのまま勢いで耳にあてると、通話中だったらしいそれからは人の声が聞こえてきた。


『真白さん? どうしたんですか!?』


この声──浅野さん?

困惑と焦りが混ざったような彼の声がする。お父さん、浅野さんと電話中に倒れたんだ。


「あ、さのさん……」

『……美玲か? おい、真白さんは──』

「倒れたんです。すみません、切ります」


震える声で口早に告げ、彼の返事を待たずに受話器を置いた。

そして、すぐにもう一度取り上げて番号を押そうとするけれど、百十番と百十九番、どちらかわからなくなる。


「美玲ちゃん“いちいちきゅう”よ!」


咄嗟に阿部さんが言ってくれて、ちゃんと容態と住所だけは伝えなければと、動揺しまくりの自分を必死に奮い立たせた。


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