まだ、心の準備できてません!
「……っ、ふ……」
ロビーの椅子に座ったまま、俯いて唇を噛みしめるけれど、涙は堪えきれない。
大きな病気ではなかったことの安堵感と、不甲斐ない自分への悔しさが入り混じって、止めることが出来なかった。
少しすると人目が気になり、一旦トイレに向かおうと人通りの少ない廊下を俯いて歩いていると、バッグの中に入れたスマホが震える。
取り出してみると、登録していない携帯番号から電話が掛かってきている。
少し迷うけれど、とりあえず出てみることにして、涙を拭いながら廊下の隅に移動し、通話ボタンをタップした。
「もしもし、真白です」
『美玲?』
低く、色気を感じる声。
それはさっきも電話越しに聞いたもので、誰かはすぐにわかった。
「浅野さん……!?」
『悪い、マシロに掛けて君の番号を教えてもらった』
「どうして、そんな……」
『真白さんが倒れたなんて聞いたら、心配せずにはいられないだろ』
焦燥を抱いたような口調から、彼は本当に心配しているのだとわかる。
それもそうか……だって、これから奪おうとしている店の主のことだもんね。
心配しているのは、ひとりの人としてじゃなく、仕事のための駒としてなのかもしれない。
そう考えると、急激に頭の中が冷えていく感覚がした。
ロビーの椅子に座ったまま、俯いて唇を噛みしめるけれど、涙は堪えきれない。
大きな病気ではなかったことの安堵感と、不甲斐ない自分への悔しさが入り混じって、止めることが出来なかった。
少しすると人目が気になり、一旦トイレに向かおうと人通りの少ない廊下を俯いて歩いていると、バッグの中に入れたスマホが震える。
取り出してみると、登録していない携帯番号から電話が掛かってきている。
少し迷うけれど、とりあえず出てみることにして、涙を拭いながら廊下の隅に移動し、通話ボタンをタップした。
「もしもし、真白です」
『美玲?』
低く、色気を感じる声。
それはさっきも電話越しに聞いたもので、誰かはすぐにわかった。
「浅野さん……!?」
『悪い、マシロに掛けて君の番号を教えてもらった』
「どうして、そんな……」
『真白さんが倒れたなんて聞いたら、心配せずにはいられないだろ』
焦燥を抱いたような口調から、彼は本当に心配しているのだとわかる。
それもそうか……だって、これから奪おうとしている店の主のことだもんね。
心配しているのは、ひとりの人としてじゃなく、仕事のための駒としてなのかもしれない。
そう考えると、急激に頭の中が冷えていく感覚がした。