まだ、心の準備できてません！
苦笑しながら言う陽介に、私はただ驚くばかり。

夏輝さん、陽介と話していたんだ……。もしかして、向日葵を買った時？


「マシロのために僕が出来ることって言ったら、花をたくさん売るか、知り合いの花屋にマシロの宣伝をしておくことくらいしかないんだ。でも、そんなの大した力にはならないでしょ」


嘲笑を漏らす彼に、申し訳なさと、マシロのことを考えてくれていたことへの感謝が入り混じる。


「そんなこと、気にしなくていいのに」


眉を下げて言う私に、彼は力無く笑って首を横に振る。


「それと同じで、みーちゃんのために出来ることは、ずっと変わらずに好きでいることくらいしかない。それが僕の売りみたいなものだったんだけどさ。でも、それってみーちゃんに望まれなければ、何の価値もないことじゃん」


ズキン、と胸が痛んだ。

しっかりとした口調の陽介だけど、目は伏せられていて、やりきれなさがひしひしと伝わってくる。けれど。


「もう潮時だよなって気付いたら、やっと心の準備が出来たんだ」


私に目線を上げた彼の瞳は、冬の晴れた空みたいに、すっきりと澄んでいるように見えた。

その瞳とまっすぐ見つめ合うと、彼がすうっと息を吸い込む。

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