まだ、心の準備できてません！
それを聞いて、やっとピンと来た。


「じゃあ……もしかして“特別なミキ”っていうのは……？」

「そう、君のお母さんのこと」


クスッと微笑まれ、身体の力が抜けていく気がした。

ずっと三木さんだと思っていた人が、まさかお母さんだったなんて……信じられない！

夏輝さんとそんな繋がりがあって、しかも“美紀子”のあだ名が“ミキ”だなんて思いもしなかったし、あの状況で勘違いしない方がおかしいよね……。


それにしても、特別っていうのはどうしてなんだろう。普通、担任の先生にそこまでの感情はないように思うのだけど。

そんな私の考えを読んだように、夏輝さんは丁寧に新しいお花を生けながら話し出す。


「俺も、産まれたばっかりの頃に病気で母親を亡くしてるんだ。その母親代わりになってくれてたのが、美紀子先生だった」

「そう、だったんですか……」


夏輝さんも、お母さんを亡くしていた──。

初めて知る事実に、同情する気持ちと、妙な仲間意識みたいなものが芽生える。


「いつも笑顔で、明るくて。でも怒るとすげー恐くてさ。悩みがあれば親身に聞いてくれたし、たぶん母親っていうのは先生みたいな人のことを言うんだろうなって思ってた」


彼は昔を思い返すように、優しく目を細めていた。

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