まだ、心の準備できてません!
夏輝さんが一人暮らししている十五階建てのマンションはまだ比較的新しく、モダンな雰囲気の外観もオートロックのエントランスも、綺麗で清潔な印象を受けた。
とってもとっても緊張しているけど、初めて見るマンションの内部に興味津々で、キョロキョロと見回していると。
「子供みたいだな」
エレベーターのボタンを押して、ぷっと夏輝さんが吹き出した。
む、とむくれる私だけど、こういうところこそ子供っぽいと思われちゃうか……。
そう考えると、急に不安が過ぎる。
どうしよう。私グラマラスな体型でもないし、何よりこの大人な彼を満足させるような、ベッドでの振る舞い方なんて出来っこない。
幻滅されたりしないかな……。
悪い想像が膨らみ始め、顔を強張らせつつ扉が開いたエレベーターに乗り込む。
彼がボタンを押し、扉が閉まった瞬間、視界が暗くなった。
──キスされたのだと気付いたのは、リップ音を立てて軽く触れた唇が離された直後。
見開く私の瞳に、余裕の笑みを浮かべた彼が映る。
「怒るなよ」
「……怒ってません。ちょっと心配になっただけで」
もじもじしながら言う私に、一瞬キョトンとした夏輝さんだけれど。
「こうやって、ちゃんと欲情してるから大丈夫」
悪戯っぽく口角を上げて、再び私の唇を奪った。