まだ、心の準備できてません!
うぅ、“子供なんかじゃないよ”的なことを言ってフォローしてはくれないのね……意地悪。

けれどそんな小さな不満は、十二階にある眺めの良い彼の部屋に着くと、すぐに消えてしまった。


「わぁ、ステキ!」


部屋ももちろん広くて綺麗なのだけど、リビングダイニングの大きな窓から眺められる夜景は、都会ではなくてもとても魅力的だ。

窓に駆け寄る私に笑いながら、夏輝さんはコートを脱いでいる。それを見た私も脱ごうとして、ふと思い出した。

そうだ、プレゼントを渡すなら今しかないよね?


「あの、夏輝さん!」


コートをハンガーに掛けていた彼に、上品なワインレッドの包装紙にゴールドのリボンを巻いた、小さな長方形の包みを差し出した。

包み方はシンプルだけれど、リボンをボリュームが出るように立体的に結んである。


「クリスマスプレゼントです。たいしたものじゃないけど……」

「わざわざ用意してくれたのか? ありがとう」


少し驚いたような表情をした彼は、柔らかに目を細めた。

さっそく「開けていい?」と言われ、こくりと頷く私。どんな反応をするだろうと、ドキドキしながら解かれるリボンを見つめる。

包装紙の中から姿を現したものを見つめて、彼はぽつりと呟いた。

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