まだ、心の準備できてません!
「……電子タバコ?」

「はい。夏輝さんが煙草吸ってる姿も素敵なんですけど、やっぱり身体には悪いよなぁと思って。お父さんが倒れたこともあるし、これを機に禁煙してもらうってのもアリかなと!」


何故か得意げになりながら、饒舌に話す私。

最初はライターとかにしようかとも思ったのだけど、やっぱり健康を考えると煙草は良くないもの。


「今の禁煙グッズってすごいですね。これ、ちゃんと煙を吸えるらしいんですよ! もちろんニコチンも発ガン性物質も入ってないし……」

「ぶっ」


力説していると、夏輝さんが口に手の甲を当てて笑い始める。


「な、何かおかしいですか?」

「いや、あまりにも色気のないプレゼントだなと」

「えぇ~!?」


せっかくいろいろと考えて選んだのに! ショック!

ガーンと青ざめる私に、彼は「悪い、冗談」と笑いを堪えながら言った。

あんまり冗談っぽくないんですけど?と思いながら、恨めしげに夏輝さんを見やると、彼はぽんぽんと私の頭を撫でる。


「俺のために選んでくれて嬉しいよ。美玲がそう言うなら、止めるように努力するか。嫌われたくないしな」


最後のフレーズがなんだか可愛らしくて、ショックが一転、ちょっぴりキュンとしてしまった。

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