まだ、心の準備できてません!
恍惚の表情で見つめる私の頬を撫で、彼は困ったように笑う。


「そんな顔されると、最初から我慢出来ない」

「っ……手加減、してください」

「さぁ、どうかな」


腹黒さをかいま見せたかと思うと、彼の手は私が纏う布を一枚ずつ剥ぎ取っていく。プレゼントのラッピングを剥がすように、丁寧に。

そうして現れた、下着に隠されていない白い胸元に唇が吸い付き、紅い花を咲かせる。

わずかな痛みで小さく声を漏らすと、彼は胸から顔を離し、挑発的で艶めかしい視線を向けて言う。


「最終確認」

「え……」

「心の準備は出来てるか?」


──そんなの、答えは簡単だ。

恋に落ちたあの時から、あなたについていくことも、こうして抱かれることも、全部覚悟は出来ている。

もう、臆病な自分とはサヨナラしたのだから。


「もちろんです。……夏輝さんだから、もう一度恋愛しようって思えたんですよ」


合併だなんて言われた時はなんてひどい人だと思っていたけれど。

本当は私達のことを真剣に考えてくれていて、頼もしくて、ストレートに愛を伝えてくれる人。

だから、私はあなたを信じて、もう一度恋に落ちることが出来たんだ。

そんな想いを込めてしっかりとした口調で言うと、夏輝さんは安堵と嬉しさが混ざった笑みを見せた。

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