まだ、心の準備できてません!
「夏輝さん……!」


私は彼を見上げて小さく胸を鳴らす。

ぽかんとする大学生くんに見せ付けるように、夏輝さんはポケットに入れた方とは逆の手で、私の肩をぐいっと抱き寄せた。


「プレゼントをもらうのも、クリスマスの夜を一緒に過ごすのも俺だから」


自信に満ちた彼の言葉にギョッとした様子の大学生くんは、「そ、そうなんすか! 失礼しました~!」と言うと、疾風のように会議室を飛び出していった。

ふたりして思わず笑ってしまう。


「仕事早く終わったから来たんだけど、ちょうどよかったな」

「うん。ありがとうございました」


彼は相変わらず私のヒーローだ。

恋人という関係になってから、もうすぐ一年が経とうとしている。時々小さなケンカもするけれど、私達の仲はあの頃から変わらない。

ううん、たぶんもっとお互いを想い合えるようになっているはず。


今日のように早く仕事を切り上げられると、夏輝さんは会いに来てくれる。

そして私の家に来た時は、お父さんも一緒に夕飯を食べるのが定番となっているのだけれど。

今日向かったのは、彼のマンション。

夕飯を用意する前に、甘いキスをされながら、「美玲を食べさせて」なんて囁かれて。

すぐにベッドになだれ込んでしまうのも、定番……かもしれない。

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