まだ、心の準備できてません!
平凡だけど幸せな日々を過ごして、今年もクリスマスがやってきた。
ケーキは夏輝さんが買ってきてくれる約束だから、私は彼のマンションでごちそうを用意して待っていよう。
プレゼントは、もう色気がないなんて言われないように香水にしたもんね。
素敵な夜になることを想像しながら、段ボールの束をごみ捨て場に出して店内に戻ろうとした時。
「メリークリスマ~ス♪」
ブロロロ、というスクーターの音とともに、陽気な声が聞こえてきた。
振り向けば、ジャケットの下にサンタクロースの赤い衣装を着て、白いお髭まで付けた陽介がにっこり笑って登場。
マシロの前で止まった彼に、私はククッと笑いながら言う。
「よく恥ずかしくないね」
「恥を捨ててやってるんだよ!」
少し顔を赤らめて、すかさずつっこむ陽介。
相変わらずこんな調子で、由香も含めて私達は仲良くやっている。
「まぁ、今年は彼女とラブラブなクリスマスを過ごせるんだもんね。浮かれててもしょうがないか」
「だから、浮かれてんじゃないって!」
眉間にシワを寄せる陽介に笑いながら、私は内心ほっとしていた。
由香が紹介した女の子と会うことに、最初は乗り気じゃなさそうだった陽介だけど、花が好きな彼女と意気投合したらしく、数ヶ月前にめでたく付き合うことになったから。