まだ、心の準備できてません!
陽介とは友達のままでいたいという私の答えを聞いた阿部さん達は、「そっかぁ」と言って、気の毒そうな笑みを見せていた。

でも、陽介が私のことをどう想っているかはわからないし、こんなことを考えても意味ない気がするけどね。


そして閉店の二十分前、噂の彼がやってきた。


「マシロの皆さん、お疲れ様でーす」

「陽介くん! いらっしゃい」


戸口からひょいっと顔を覗かせて、いつものエンジェルスマイルを振りまく陽介に、パートの二人もご機嫌だ。

壁に掛けられたアンティークの時計を見上げた浜名さんが、私に声を掛ける。


「美玲ちゃん、行ってきていいわよ。あとは清算するだけだし、私達だけで十分」

「本当ですか?」


どうしよう、と一瞬考える私に、阿部さんもニコニコ顔で頷く。


「いいよいいよ。エンジェルボーイを待たせたら悪いしねぇ」

「何すか、そのネーミングは……」


口の端をヒクつかせて苦笑いする陽介に笑いつつ、「じゃあ、お言葉に甘えて」と言って、私はエプロンを外し始めた。

事務所に入り、身支度を整えると、鏡でみだしなみをチェックする。

今日は一応普段より気を遣って、白のニットワンピにレギンスを合わせた、きれいめなスタイルにした。

鎖骨にかかるくらいの髪の毛は緩いくせがあるから、少し手ぐしで整えるだけ。

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