まだ、心の準備できてません!
「ありがとう……! すごい嬉しい」


満面の笑顔を向けると、彼も嬉しそうに微笑んだ。

いい香りがする花に鼻を近付けて、じっくりと眺めていると、陽介がこんな質問をする。


「バラの花言葉って知ってる?」


キョトンとして、首をかしげる私。


「さぁ……私そういうの疎いからわかんないや」

「だよね、そう思った」


あは、と無邪気に笑う陽介だけど、ちょっと失礼だよ?

ピクリと片眉を上げる私に気付いているのかいないのか、彼は自然な動作で私の手を握る。

ドキンと、ひとつ胸が鳴った。


「後で教えるね。とりあえず行こ」

「あ、うん……!」


言われるがまま、片手に花束を持ち、もう片方の手を引かれて歩き出した。


……こうやって陽介と手を繋ぐなんて、たぶん中学の時以来だ。

あの時は、クラスの女子とうまくいってなくて、ヘコんでた私を慰めてくれたんだよね。

あったかくて、決してゴツゴツしていない、心地良い手。

もうあの頃とは違う大人だけれど、伝わってくるぬくもりは同じだ。


百六十センチの私より少し背の高い陽介を、ちらりと見上げる。

白いTシャツに青いブルゾンを合わせたカジュアルなスタイルの彼は、私から見てもイケメンだなぁと思う。

< 35 / 325 >

この作品をシェア

pagetop