まだ、心の準備できてません!
観念した私は、恥ずかしさを堪えて口を開けた。

かぶりついた大きなお肉は温かくてジューシーで、その美味しさのおかげで羞恥心はすぐになくなっていく。


「うん、美味しい!」

「僕もちょーだい」


そう言うと、陽介は私が一口食べたから揚げを、愛嬌のあるアヒル口に放り込んだ。

……ってこれ、間接キス、的な。

私達仲は良かったけど、こういうのしたことあったっけ。

浜名さんが言っていた通り、陽介は奥手だ。昔から人が飲んだジュースとか、意識して飲まないようにしていたと思う。

なのに、今日はどうしたっていうんだろう。これじゃ普通のカップルだよ。


……別に嫌なわけではないけど。

そもそも、もう間接キスで照れるような歳じゃないし。まぁいっか。

陽介も特に気にした様子はなく、その後も私達はクレープを分け合って食べた。


食べ終わると、陽介は私がはぐれないようにと手を繋いでくれる。

なんか、やっぱり今日は積極的……。でも、彼の耳はちょっぴり赤くなっているように見える。

照れてるじゃん、と思いつつも、振り払う理由もないから、そのまま手を繋いで歩いた。

トクトクと、少しだけ速い胸の鼓動を感じながら。

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