まだ、心の準備できてません!
そんな私達と、浴衣姿の可愛らしい女性や子供達、仲良さそうなカップルがすれ違う。

皆が楽しそうで、活気に溢れたこの雰囲気、やっぱり好きだな。


賑やかで明るい、屋台がある通りを抜けると、夜風がとても涼しく感じた。

橋の向こうには、クラシックな雰囲気のレストランが、柔らかなクリーム色の明かりを照らしている。

屋台がある方とは反対の、歩く人もそれほど多くはないそちら側の通りを目指して、私達は橋を渡り始めた。


「そういえば、お父さん見当たらなかったな」


私は屋台の群れを振り返って言う。

人が多くて、どこにいるのかわからなかった。もし見掛けたら何か買ってあげようと思ったのに。


「そっか、おじさん手伝ってるんだもんね。もっかい見てく?」


少し歩くペースを緩めて問い掛ける陽介に、私は首を横に振った。


「ううん、いーよ。どうしても会いたいわけじゃないし、陽介と二人でいるとこ見たら絶対勘違いするもん」


陽介のことはもちろんお父さんも知っているし、付き合っていると思われたら冷やかしてくるに違いない。

そんなシーンを想像しながら笑って言うと、陽介は足を止める。

不思議に思って彼を見上げると、なんだかとても真剣な瞳が私を見据えていた。


「……僕が彼氏じゃイヤ?」

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