まだ、心の準備できてません!
奇妙なモノを見る目で一瞥すると、陽介は天使みたいな顔でニコニコと笑っている。


「何か変なものでも食べた?」

「真剣に心配しないでよ。ていうか、リアクションが可愛くない。もっとドキッとしてくれてもいいじゃん」

「私がそういうキャラじゃないの知ってるでしょ」


口を尖らせる陽介に構わず、私はカウンターから出て紙に書かれた品物を集める。

透明なセロハンに、ピンク色の柔らかなペーパー、何種類かのサテンリボン。

陽介はこの商店街の花屋、“フローリスト・ハーティ”で働いているのだ。


エプロンをして花束を作る彼は、本当に癒し系のエンジェルボーイで、女性客を虜にしてやまない。

でも、決してチャラチャラした男ではないし、あんな軽いセリフを吐くようなタイプでもないことは、中学からの付き合いがある私もよく知っている。


「陽介もそんなこと言うキャラじゃないのに、どうしちゃったの?」


ラップのように巻かれたいくつかの資材やリボンを両手に、レジまで戻って言うと、彼はにんまりと笑う。


「今日給料日だから気分いいんだよね」

「花に囲まれて、ついにあんたの頭もお花畑になっちゃったのね」

「ひど過ぎるよ、みーちゃん……」


がっくりとうなだれる陽介に、私は思わず吹き出した。

昔からこうやってこのコをからかうのが楽しいんだよね。

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