まだ、心の準備できてません!
陽介がこの街に引っ越してきて、彼の両親が花屋を開いてから、私達は必然的によく遊ぶようになった。

優しくて、他人のことにもよく気が回る彼は、はっきりものを言って女子の敵を作ってしまいやすい私を、いつも気にかけてくれていた。

まぁ、それが逆に陽介ファンの子から妬まれたりしていたわけだけれど。


女同士の付き合いっていうのは本当に面倒だ。男のことが絡むとなおさら。

だから、信頼出来る友達がほんの数人いればいいし、彼氏も当分いらない。

──もう、あんなゴタゴタに巻き込まれるのは御免だから。



「そういえば、新しく出来たそこのビル、まだ行ってないの?」


ぼんやりと考えながら袋に資材を詰めていると、お金を出しながら陽介が言った。


「あぁ、あの雑貨屋とかなんか色々入ってるとこだよね? まだだよ」


この商店街から駅方面に向かって徒歩五分ほどの近場にビルが建ち、半年ほど前に新しいお店がオープンしたことを思い出す。

雑貨や、うちと同じような包装用品を売っているらしいと、浜名さんが言っていたっけ。


商店街を少し外れ、駅の方へ向かうと、そこはもう近代的なビルやショップが並ぶ街になる。

服や靴を買いたい時はそっちでショッピングするけれど、そのお店はあまり気にしていなかった。

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