まだ、心の準備できてません!
◇ジャスミンとホワイト


くっついた重い瞼をゆっくりと開いた時、視界に入ったものは見慣れた天井。

ぼうっとしながら顔を横に向けると、窓の外はうっすら明るくなっている。

もう朝か……いつもより早く起きちゃったな……


……っじゃなくて!


「あれ!? 何で自分の部屋で寝て……っ、イタタタ」


ガバッと勢い良く上体を起こすと、激しい頭痛に襲われて再びベッドに横たわった。

こめかみを押さえながら記憶を整理する。

そうだ、昨日は夏輝さんとスナックで飲んでいて、酔っ払って泣いたんだ。そしたら急に彼が迫ってきて、それで……


「そ、そこまでの記憶しかない……」


ズキズキと痛む頭で考えても、あの後どうやってここまで帰ってきたのか、まったく覚えていない。

私ちゃんとお金払ったかな? 自転車は……たぶんマシロに置いたままだよね?

何も失礼なことしなかったかな……って、あれだけ酔っ払った時点で十分失礼か。

汚点ばっかりで恥ずかしくなると同時に、夏輝さんへの申し訳なさが募る。

でも、あの人が変なこと言うから……。


『俺は、いつか君をもらうから』

って、たしかに言っていたよね? 聞き間違えじゃない、はず。

< 70 / 325 >

この作品をシェア

pagetop