まだ、心の準備できてません!
陽介は意外そうな顔で私を見る。


「一応同業者みたいなもんでしょ? 気にならないの?」

「んー……なんかあそこすごいオシャレじゃない? うちとはコンセプトが全然違うっていうか、敷居が高い感じがしてちょっとね」


あのビルの前を通ることはよくあるけれど、ものすごく綺麗で都会的で、若い女性が好きそうな雰囲気だった。

対するここマシロは、老舗のお店が軒を連ねる商店街にマッチしたお店。

客層も四十代から五十代くらいが一番多かったりするし、商品は乱雑に溢れていて、お世辞にもオシャレとは言い難い。

だから、比べるまでもないかなと思っていた。


レジをいじっておつりを渡す私に、陽介は少し不満そうな顔をする。


「みーちゃんが興味あるなら一緒に行こうと思ったのにな」

「一人で行けばいいじゃない。陽介なら女の子みたいだから、きっとあの場にいても違和感ないよ」

「そういう問題じゃないー! ていうかそれ、普通にヘコむし……」


またうなだれている姿に笑いながら、私は彼の緩いパーマがかかった髪の毛をよしよしと撫でた。


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