まだ、心の準備できてません!
「何で陽介が謝るの。謝らなきゃいけないのは私なのに……」


弱い声が尻つぼみになっていく。

陽介の想いに答えられなくて、しかもあのまま逃げちゃって、申し訳ないことばかりだ。

今度は私が目線を下げると、陽介は少し笑って首を横に振った。


「断られるのはほぼわかってたんだけど、なんかあの時は引けなくて。思わず『先輩とは違う』とか言っちゃったけど、そんなこと言われてもみーちゃんも困るでしょ。だから、ゴメン」


しっかりした口調で言い、軽く頭を下げた彼は、どこか開き直ったような表情を見せる。


「でも、やっぱりまだ諦めはつかないんだ。みーちゃんはまだ恋愛が出来ないだけで、可能性はゼロじゃないんじゃないかって思っちゃうんだよ、女々しいけど」


そうだよね……陽介の期待してしまう気持ちはわかる。

私も、本当に陽介とは恋愛出来ないって、百パーセント言い切る自信は正直まだないから。


「だから、ちゃんと恋愛出来る準備が整ったら、もう一度告白させて。それでダメなら、きっと諦められるから」


そう言って微笑む陽介は、なんだかすごく大人に見えてドキリとした。

私も少し笑みを浮かべて「うん」と頷く。

< 91 / 325 >

この作品をシェア

pagetop