まだ、心の準備できてません!
けれど、同時に思い出してしまう。

『君はまだ準備期間中なんだな』という、あの人の言葉と、余裕のある姿を。

心の準備が整う、イコール、恋愛を始めるということだ。その時、私はどんな答えを出すのだろう。

誰を、好きになっているのだろう──。



「とりあえずコレ食べよっか!」


ぼうっと考えていた私は、陽介の明るくなった声ではっとする。

そうだ、まだお互いサンドイッチに手をつけていなかった。

私はトマトやアボカド、エビなどたくさんの具が挟まった、まだほんのり温かいそれを手に取って笑う。


「そうだね。これ具だくさんでほんと美味しそう! いただきまーす」

「それちょっとちょーだい?」


小首をかしげ、上目遣いで言う陽介に、私はボリュームのあるサンドイッチにかぶりつく直前に動きを止める。


「……可愛くおねだりされてもダメ」

「ケチー」


お互いじとっとした目を合わせた後、ぷっと同時に吹き出した。


やっぱり私は、陽介とはこうやってゆるい言い合いをしているのが心地良い。

とりあえず、もう気まずい空気は漂わせないようにしよう。

そう思い、ようやく二人で食べ始めてしばらくすると、私達のテーブルのすぐそばに誰かが近付いてきた。

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