まだ、心の準備できてません！

「えーなんか怪しい……気もするけど、とりあえずあたしもお昼まだだから買ってくる！」


ゆるふわロングの髪をなびかせ、ぴゅーっと店内に入っていく由香を見て、私達は目を見合わせて笑った。


身長百五十センチそこそこで、動きが忙しない彼女は、顔もちっちゃくて愛らしく、まさに小動物みたいだ。

“守ってあげたくなる”という言葉がよく似合うし、学生時代は、晴菜ほどではないけれど由香を狙っている男子は多かった。

でも、それをひけらかしたりせず、むしろ本人も気付いていないくらいで、やや天然が入った彼女は本当に可愛らしいと思う。


そんな由香が長方形の包みを二つとラージサイズのフライドポテト、カスタードパイをトレーに乗せてやってくると、私と陽介の間に腰を下ろした。


「あーお腹すいて死にそう。いただきまーす！」


両手を合わせ、さっそく大きな口を開けてサンドイッチにかぶりつく。

幸せそうに頬張る彼女を、私は頬杖をついて眺める。


「相変わらずよく食べるね」

「えー？　これでも少ないくらいだよぉ」


ケロッとしている由香。

そのサンドイッチを一つ食べれば、大抵の女子はお腹が満たされるであろうボリュームなんだけどね、と心の中で言う。