ひと夏の救い
意外にもツボってしまったらしい先生が暫く笑い続け、
その声の大きさに焦った東雲君が静かにさせようとしているのを何の感慨もなくみてた。
何がそんなにおかしいのか、
私にはちっとも分からないわ。
先生がやっと息を落ち着かせ始めたその時。
図書室のドアが壊れるんじゃないかっていうくらい大きな音を立てて開いた。
ガラガラ!ビシャン!!!
一体なんなの!?突然大きな音出さないでったら!!
「穂積!荒峰!いるか!!?」
「声が大きいよまこちゃん!さっきのやつに聞かれたらどうすんの!?」
「どっちもうるさい…」
音に反応した私達は同時に扉に目を向けていた。
そしてその先にいたのは、
「誠!澄晴に岬も、無事だったのか」
東雲君がホッと静かに息を吐く。
これまで特に何も3人を気にするような素振りはなかったけれど、
やっぱり心配していたみたいね。
それにしても、騒がしい登場だわ。
何回驚かされればいいのよ、私は…はあ。
「え!!なんで先生がいるの!?」
「ホントだ!田口先生、こんばんは!」
「この状況でなんで挨拶するのよ…」
「クラブのときから挨拶は大事と教わっているからな」
「だからって…すごいメンタルね」
「それでこそ誠だよね…ふあぁ」
「え、お前達2人だけじゃなかったのか?
まさか噂の王子様が4人共揃うとは…」
そういえば、東雲君と私の他に澄晴や木下君と奈良坂君も一緒だったこと、言っていなかったかもしれないわね。
それにしても、もしかして先生の間でもその噂は蔓延しているのかしら?
ああ、自分の事じゃ無いのに私が恥ずかしいわ。
まあ、4人とも顔の造形は整っているのかもしれないけれど。
クラスで王子四人衆の話をする女子たちの話から鑑みるに、だけれどね。
(澄晴達の話だからって聞き耳立てたわけじゃないわよ?
近くで話すからたまたま耳に入ってしまっただけなんだから!)
チラと見て隣にいる東雲君が目に入る。
東雲君は、目の端がつり上がっていて、余り大声で話したり笑ったりしないから大人な雰囲気があるって、ちょっと近寄り難いキツそうな人って印象が強いみたい。
でも、その中でも東雲君と学級委員で知り合ったり、クラスの行事で関わった人達は、冷静だけど冷たい訳じゃなくて、頼りになる存在だと見直すことが多くて、そのギャップに落ちちゃう?女子が多数なんだとか。男子生徒の中でも、密かにお母さんと囁かれているくらい、信頼が厚いらしいわ。
分からなくは無いけれど、私にとってはただのお節介焼きだけれどね。
…まあ、私を思っての事だと言うのは分かるけれど。不本意ながら。