ひと夏の救い

暫くはそうして前に澄晴と明、後ろに王子3名が並んで廊下を歩いていたが、歩く足に目的は感じず、澄晴に至っては多分機嫌のままに歩いているだけなのだろう。

気紛れに繋いだ手を前後に揺らしたりしてツンツンした明を相手に楽しそうに話していた。

しかしさっき澄晴が言ったように、既に外は暗く星を埋め込んだ黒が空を覆っている。女の子である明もそうだが、自分たちだって安全なわけではないし、断ったとは言え帰りが遅いと家族に心配をかけてしまうと東雲穂積(しののめほづみ)は思った。

澄晴は笑顔が上手く、それで周りに好感を持たれはするし優しげで気安さを感じさせてくれるが、その実澄晴がいつもどこか違う所を見ている気がしていた。楽しくないのか、他の人には分からないくらい些細な視線だが、何かが足りないというような顔をする事が良くあった。

そんな澄晴が、常に見ないような輝く瞳で幸せそうに笑っているのを邪魔するのは心苦しいが、時間は有限、なんなら明日だって学校はあるのだ。

「そこの楽しそうな二人、お喋りもいいがそろそろ…」

申し訳ない気持ちを持ったまま前の2人に話しかけようと前を向いた時、それを見つけた。

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