ひと夏の救い
一度考えたら関心が大きくなってきた。
今ならもしかしたら、犯人とはち合うような事もあるかもしれない。
もしこの目で現場を見たなら、警察に言うと脅してやめてもらえたりするかも。たかが無くし物でそこまでする気は無いけれど、怯ませることくらいできるでしょ?きっと。
見に行きたい。そんなタイミングよく会うわけ無いとは思うけれど。
となると、この人たちとは別行動しなくてはいけない。
なんて言ったって『関係ない』のだから。
他人の困り事に関わるなんて面倒極まりないもの。私が反対の立場ならそう思う。
それに、少し覗くだけだから。
今歩いている廊下の先には、端にある目的の教室に着くまでにトイレがある。いつも使っている場所。
前を歩く木下君は、感のままにそちらとは違う方向に向かおうとしている。
チャンスだわ。ここで少し離れて、見に行ければ。
「あの」
声をかければ全員が振り向く。
そんなに注目されると大したことでは無いのに言いずらいわ…。
「どうした?」
「私ちょっと、お手洗に行きたいのだけれど…」
そう言ってトイレの方向を指差して示した。
「あ、着いてってあげようか?」
「結構よ」
澄晴がふざけて自分を指しながらいうのににべもなく返すと、あ、そお?と気まずそうに手を下ろした。
「一人で平気か?」
「ええ、すぐ戻るから。何なら先に行ってくれても構わないわ」
「分かった。流石に置いてはいかないが、俺たちはそこの教室の前で待ってる。急がなくていいからな」
「…うん」
「「いってらっしゃ〜い」」
東雲君が心配そうに見ながら言うのに正面から目を見て平気って意志を伝えると、からりと笑う木下君と私を心配してなのかヘタった眉ででもおちゃらけた言い方で送り出す澄晴。
それを一瞥して、数歩過ぎた廊下を戻って角を曲がった。