ひと夏の救い
現在
ああ。嫌なこと思い出してしまったな…
窓の外、遠くに見える街の小さな街灯を無機質に見ながら思った。
この暗い暗い空の下、誰もそばにいない静かな場所。広いはずなのに、お仕置の部屋を思い出させて何だか狭苦しい気持ちになった。
っ…ぁ……は…あ…ぁ…
心做しか息遣いまで荒くなり始めたかと感じた時、違和感を感じた。
これ、私じゃない。
自分の口を手で抑え、試しに息を止めて見るけれど…やっぱり、まだ、聴こえる。
今までよりも更にゆっくり、そろりと足を進めて壁に寄りかかってみると、その壁越しにやはり小さく聞こえてくる。
どうして?またこの学校の生徒か先生が?
あんなに居たらまだ居るとしても驚きはしないけれど…
半ば呆れた気持ちでそう思いながら1歩進む。
いるのは、今私が目指していた教室のようだった。
そっと、そっと、扉の隙間に片目を凝らす。
月に照らされて影になった背中が見えた。
いるのは多分、一人だけ。
静かに隙間に手を差し入れ、何をしているかよく見ようとゆっくりと引いていく。
「そこにいるのは、誰?」