ひと夏の救い

「一体どうして荒峰は消えたんだ?」
「疲れたから帰ったんじゃねーの」
「俺たちに何も言わず、か。確かに荒峰は無愛想だしマイペースな所があるとは言え、一言も言わずに行ってしまうとは考えづらい…さっきの空き教室での事、覚えてるだろう」
「ああ!何かオレ、嬉しかったなあ。オレはバカだけど、荒峰が俺たちのこと嫌ってんじゃないってのは分かったぜ」
「だろう。だから多分自分の意思ではない筈だ。やはり何かが起こったのかも知れない」
「何かって何だ??」
「…神隠し、とか」
「いやいや、それこそありえないでしょ!ま、俺ら今そういうの見て回ってるワケだけどさぁ?」
「あのメッセージを見た後だ。無いとも言い切れないが…だとしたら俺たちに出来ることは何も無いな」
「ちょ、待ってよ!まさか諦めて次行こうっての!?」
「そうは言ってないだろう。もし本当に人間の領域を超えたモノの仕業であるなら、という話だ」
「穂積ってそういうの信じねえんだと思ってた!」
「今だって信じてないが、今日一日で少し考えが変わったんだ」
「…ねえそんな事よりさ、アッキーを探そうよ。自分の意思でもそうじゃないとしても、とりあえず探さないとでしょ」
「あ、ああそうだな。だがどこを探せば…」
「教室、とか」
「何でだよ?」
「さっきちょっとだけ話してたでしょ?ここの端が俺らの教室だって。その時、何となくアッキーが気にしてる風だったんだよね。気のせいかと思ったけど、今考えたらやっぱり教室が気になってるみたいだった」
「ふーん…でも、何で気にしてたの…?ふぁ」
「さあ…そこまでは」
「行って見りゃ分かんだろ!そうと決まれば早く行こうぜ!」
「そうだな、行こう」
「じゃあ、荒峰探しにレッツゴー!」
「誠…元気だね」
「うん、急ごう。なんか嫌な予感がするんだ」

こうして、明を探しに教室へ向かったのだった。

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