ひと夏の救い

意識が逸れそうになって、いけないと脳内で自分の頭を叩いた。表情も崩していない。
そんなふうに考えている中、上から声が降る。

「ぼ、僕の名前はね、ユウキって、言うんだあ。勇ましい気持ち、で、そのまま勇気」
「まあ、かっこ良くていいお名前ですね」
「え、そ、そうかなあ?」
「…ええ、そう思います」
「ふぐふふ、ちょっと照れるけど、嬉しい。今までは嫌いだったんだ。名前負けしてるとか、普通過ぎて面白くないとか言われてたから…でも、アキラちゃんがそう言うなら、悪くないかも。あ、今こうして逢えたのも、運命だけど、名前のお陰もあるかも、なんて…げへへへ」
「…お上手、ですわ」

そう言えば気分を良くしたらしく、笑い話す声が更に大きくなった。
気が緩んできているということだろうか?

とりあえず、よし。それでは次の段階に移りましょうか。確か名前を聞いたら趣味や特技、休日の過ごし方を…勘違いしないで欲しいのだけれど、あくまでもっと油断させつつ懐を探る為であって、『コミュニケーション能力 初級』に書かれていたものを試しているとかでは無いから。違うのよ?本当にね?
…とにかく、仲良くなりたいわけでは絶っっったいに無いから、そこ、だけ!は必ず勘違いしないでちょうだい!!…ね?



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