ひと夏の救い
ガタガタ

ドアを動かそうとしている音は決して大きくないのに、耳元でかき鳴らされる錆びた楽器のような不快で恐怖を煽る音に感じる。

無意識に手が胸にいくと思っていたよりも早い心臓の動きをまざまざと感じて、間隔がまた少し狭くなった。

あのドアは開いていたっけ?私は…閉めるわけが無いし、でもこの男が鍵を閉める音を聞いたかどうか。
思い返してみると突然引きずり込まれたから曖昧だけれどもしかしたら閉めている気がしてきたわ。

考えて、そうしたら彼らは潔く諦めて去っていくだろうという安心感がわくと同時に、じゃあ私が逃げる時も鍵を開ける数秒がロスになるのが確実と言うことになるからそれは面倒ね。まあ今知れただけマシかしら。

なんて、余裕ぶって考えながら背中に冷や汗を垂らしていた。

本当は怖い。とても怖い。強がったりしないでブルブル震えながら蹲っていたい。
でもそんなんじゃ何も解決しないし変わらないことは分かってる。
他の誰も私を助けてなんてくれないんだ
から。
自分を守れるのは自分だけだから。

そう思うから、なんとか踏ん張って歯を食いしばって涙を堪えて、今やっと立ってる。

音が消えた。諦めて帰ったらしい。
探検だってそろそろ終わらせようという雰囲気でもあったから当然よね。

それなら、心置き無く私も勝負に出れる。

一度小さく呼吸をして、緊張を少しでも和らげる。

心の中でカウントダウンを始めた。

3…



2…



1


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